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8.3.2 H.323システムのマルチポイント制御

1) マルチポイントテレビ会議のシステム構成

  • 集中形マルチポイント(Centralized multipoint)-- MCUに全ての端末からの情報を集め,処理した結果を返します.第3.3.1項で説明しましたMCU中心のスター接続形態を取ります.
  • 分散形マルチポイント(De-centralized multipoint)-- 端末は自らを除く全ての端末に同じメディア情報を配信します.この場合も制御情報の処理は集中制御となります.第3.3.1項で説明しましたメッシュ接続形態を取ります.
  • ハイブリッド形マルチポイント(Mixed multipoint)-- 集中型と分散型が混在します.図8-29に示しますように,MCUが両形態をつなぐブリッジの役割を果たします. 広く実用されているのはMCUを用いる集中形マルチポイント・システムです.
図8-29 ハイブリッド形マルチポイント・システム
図8-29 ハイブリッド形マルチポイント・システム

MCUを中心とするスター接続の集中形マルチポイントとマルチキャストによるメッシュ接続の分散形マルチポイントが混在するシステムです.MCUは両システムをつなぐブリッジ役を果たします.分散形の場合も制御はMC (Multipoint Controller)による集中制御ですので,MCUにその機能が配置されます.

 H.323システムでは,MCU (Multipoint Control Unit)に加えてMC (Multipoint Controller)とMP (Multipoint Processor)の論理的構成要素を導入しています.MCはH.245メッセージの処理を行い,マルチポイント制御を司ります.MPは音声,映像メディア情報の処理を司ります.MCとMPの論理的構成要素の存在場所を図8-30に示します.

図8-30 MCとMPの可能な配置場所
図8-30 MCとMPの可能な配置場所

H.245信号を処理するMC (Multipoint Controller)とメディア信号を処理するMP (Multipoint Processor)は論理的構成要素で,物理的にはこの図に示しますような場所のいずれかに配置されます.端末2は製品化され広く使われている形態でMCUを内蔵した端末です.これは端末とMCUが物理的には一つの装置に収容されたものですが,システム構成要素としては二つの独立した存在です.MCU内蔵端末に最初の呼があるとポイント・ツ・ポイント接続となり,三番目以降の端末からの呼があるとMCU経由のマルチポイント接続に切り替わります.

 また,H.323システムではaddressable(IPパケットの宛先となり得る)とcallable(H.225.0呼制御信号の宛先となり得る)の概念も導入しています.各構成要素は次の性質を持っています.

  • 端末,MCU,ゲートウェイ(これらは総称してエンドポイントと呼ばれる) -- callableかつaddressable
  • ゲートキーパ -- addressableしかし非callable
  • MC, MP -- 非callableでかつ非addressable,所在場所のホストによりcallableかaddressableが決まる

2) 制御プロトコル

 H.323システムのマルチポイント制御はH.320システムのそれを踏襲していますので,固有のプロトコル標準はありません.ただし制御メッセージはすべてH.245で規定されています.

 H.320マルチポイント・システム用のH.230メッセージとH.323マルチポイント・システム用のH.245メッセージは,図8-9に一例を示しましたが,ほぼ1対1に対応しています.勧告H.245では,例えばbroadcastMyLogicalChannelの要素に"similar to ITU-T H.230 MCV"の注記が,またmakeTerminalBroadcasterの要素に"same as ITU-T H.230 VCB"と注記されています.両者の対応関係の全貌はH.246に記されています.

3) マルチポイント種類の識別

 H.323システムに固有の集中形,分散形,ハイブリッド形のマルチポイントは,図8-31に示すH.245能力メッセージで表されます.

図8-31 H.323マルチポイント通信能力を示すH.245メッセージ
図8-31 H.323マルチポイント通信能力を示すH.245メッセージ

H.323システムのマルチポイント制御プロトコルはH.320システムのそれを使いますが,制御メッセージはH.245で定義されるメッセージを用います.この図では,H.245 ASN.1シンタックスの関連部分を抜き出しています.集中形,分散形,ハイブリッド形のマルチポイントがどのように表現されるかを示しています.

 集中形マルチポイントは次の要素で示されます.

  • centralizedControl
  • centralizedAudio
  • centralizedVideo
  • centralizedData
オプションとしてdistributedAudio,distributedVideoが含まれる場合があります.

 分散形マルチポイントは次の要素で示されます.この場合も制御はMCによる集中制御となります.

  • centralizedControl
  • distributedAudio
  • distributedVideo
  • centralizedData

 ハイブリッド形マルチポイントは音声が集中制御の場合,次の要素で示されます.

  • centralizedControl
  • centralizedAudio
  • distributedVideo
  • centralizedData
また,映像が集中制御の場合,次の要素で示されます.

  • centralizedControl
  • distributedAudio
  • centralizedVideo
  • centralizedData