コラム6-2 可聴帯域外の音が聞こえるってほんと?
標題の学会誌記事[6-61]を書いたのは,千葉工業大学教授でかつ音楽家(ペンネームは山城祥二)の大橋力氏です.音楽のプロデューサとして,人間の耳には聞こえない超高周波成分をイコライジングすると音質が明らかに変わるハイパーソニック効果の体験から,その理由を脳の中の働きも参照しながら説明しています.
人間が単独で音として感じる空気振動の周波数上限はせいぜい20 kHz,たいていの人は15 kHzくらいです.これを超える高周波成分があるとないとでは音質が違って,音楽の「隠し味」として使っている,とのことです.それは,快適性と関係の深い脳波α波を増強し,脳幹や視床といった脳深部の神経活動を劇的に活性化して,人は「からだ」で聞いている,との結論です.ハイパーソニック効果は10数秒以上聞いて初めて現れ,100秒前後残留する,とのことです.
また超高周波成分は熱帯雨林などの自然環境音には豊富に含まれるものの,都市環境音にはわずかしか含まれない,とも書かれています.
超低周波でも「からだ」で聞く現象があるようです.恐怖映画の上映に際し,人間の耳では聞こえない例えば5 Hzのような超低周波音を流すと,恐怖感が増すということです.