3.2.7 通信の流れ
テレビ会議通信の始めから終わりまでは,大きくは,次のようにフェーズ分けされます.通信の流れを説明するには,どの信号が,どの通信チャネルを,どのタイミングで送受信されるかに着目します.
- フェーズA:呼接続信号の送受信により,通信チャネルを開きます.
- フェーズB:エンド・エンド制御信号の通信チャネルにより,能力交換を行い通信モードを決定します.
- フェーズC:決定された通信モードで,メディア情報を送受信します.そのときの通信チャネルはフェーズAで開かれたチャネルです.
- フェーズD:エンド・エンド制御信号の通信チャネルにより,通信終了の確認をします.
- フェーズE:通信チャネルを閉じ,テレビ会議を終了します.
ISDNにより128 kbit/sのH.320システムによるテレビ会議通信を行う場合の流れを図3-10に示します.ISDNではBチャネルと呼ばれる64 kbit/sのチャネルを1本あるいは複数本用いてテレビ会議の通信路を構成します.図3-10は2本のBチャネルを同時に使用する128 kbit/sテレビ会議の例です.ISDNでは,端末とネットワークの間で呼制御信号を送受信しますが,そのための通信路はDチャネルと呼ばれます.
ISDNにおける128 kbit/sテレビ会議の通信フェーズを示します.2本のBチャネルを用いるため複雑になっていますが,基本は呼接続のフェーズA,エンド・エンド間の能力交換.通信モード決定のフェーズB,メディア情報を送受信するフェーズC,通信終了準備のフェーズD,呼切断のフェーズEの順番で進みます.
フェーズAでDチャネルを通じ,ネットワークに対し最初のBチャネルを端末間に開設します.H.320システムではそのBチャネルの中に,16 kbit/sのチャネルを設けビット同期用FAS (Frame Alignment Signal)とエンド・エンド制御用BAS (Bit-rate Allocation Signal)の送受信に当てられます.残りの容量は,最初のBチャネル確立直後はデフォールトでG.711音声の送受信に使われます.すなわち,旧来の電話と同様,呼び出しに応答したら直ちに「もしもし」を交換できるように配慮しています.
次にフェーズBに移ります.BASの送受信により,H.242[3-14]で定められた手順に従って能力交換と通信モードのネゴシエーションが行われ,最初のBチャネルはメディアの送受信を行うフェーズCに移行します.ただし,この段階では仮のメディア送受信であるため,図3-10ではフェーズCAと表示しています.
通信モードの中にはいくつのBチャネルを用いて通信するか(今の場合はBチャネル2本)も含まれますので,ネゴシエーション結果に基づき,追加のBチャネルが開設されます.これは再びフェーズAの動作に戻ることになりますが,最初のBチャネルのフェーズAと区別するため,フェーズCAとしています.
追加のBチャネルを含めた通信路で,通信モード設定(フェーズCB)が行われ,128 kbit/sの容量を全て使ったメディア通信(フェーズC)に入ります.
テレビ会議終了時は,H.242の手順により,まずフェーズBと同様の状態に戻し,最終的にフェーズEでエンド・ネットワーク信号により2本のBチャネル通信路を閉じます.