VTVジャパン テレビ会議教科書

テレビ会議教科書 VTVジャパン株式会社

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2.3.7 ディジタル画像圧縮を用いテレビ会議

 映像信号のディジタル伝送により雑音や歪みが距離に比例して累積することはなくなりますので,安定したテレビ会議サービスのためにはディジタル化が不可欠です.しかし,4 MHz帯域の映像信号をそのままディジタル化したのでは100 Mbit/s超えの伝送回線を必要とし(電話1チャネルの64 kbit/sと比較し)非常に高価な映像伝送になってしまいますので,帯域圧縮符号化が重要な役割を果たします.1970年代から1980年代にかけて,通信ネットワークのディジタル化が進展するとともに,映像信号のディジタル信号処理が急速に進展しました.信号処理アルゴリズムの研究がコンピュータの上でできるようになったこと,高度で複雑な信号処理を可能とするLSIが実用的になったことが大きな要因です.
 テレビ会議信号の帯域圧縮符号化は,電話96チャネル相当の6.3 Mbit/sが最初の目標で,次は24チャネル相当の1.5 Mbit/s(欧州ではディジタル回線のハイアラーキから30チャネル相当の2 Mbit/s)へと進んでゆきました[2-40].1.5 Mbit/s 圧縮符号化装置(codecと呼ばれる)代表例として,1984年4月3-5日に日,英,米,加,豪の5ヶ国をテレビ会議で結び開催されたテレコンファレンスに関する国際シンポジウム(ITS: International Teleconference Symposium)[2-41]で使用された各社のcodecを図2-12に示します.

図2-12 1984年4月開催のITSで使用された1.5 Mbit/s映像codec
図2-12 1984年4月開催のITSで使用された1.5 Mbit/s映像codec

1980年代には各社で独自のアルゴリズムによりcodec開発が行われました.その代表例としてテレコンファレンスに関する国際シンポジウム(ITS: International Teleconference Symposium)で使用された1.5 Mbit/s codecが示されています.

 映像codecの小形化,低価格化が進んで利用者の構内に設置できるようになり,利用者構内間を直接ディジタル回線(専用線)で結ぶ企業内通信システムの形態でテレビ会議システムが構築されるようになりました[2-36].第2.3.6項に述べた形態と比較しシステム構成の違いを図2-13に示します.各種codecの市場投入で,米国では異なる映像codec間を相互接続するための変換センターが成り立つほどでした.この時期は,まだ映像codecの国際標準化は立ち上がったばかりで,各社の製品が群雄割拠状態にあったと言えます.

図2-13 映像codecの配置から見たテレビ会議システム構成
図2-13 映像codecの配置から見たテレビ会議システム構成

ユーザとネットワーク間のインタフェースで映像信号がアナログである(a)の形態は第2.3.6項で説明のテレビ会議サービスに適用され,ネットワークの中にcodecが配置されてディジタル伝送が行われます.それに対し第2.3.7項で説明する(b)の形態では,映像codecが利用者端末の中に設置され,ユーザとネットワーク間のインタフェースにはディジタル映像信号が流れます.

 CCITTにおけるディジタル伝送テレビ会議システムの標準化は,1981-1984研究会期から取り上げられ,最初はディジタル1次群速度(欧州では2 Mbit/s,日米では1.5 Mbit/s)を対象としたものでした.会期末の1984年にはいくつかのH.100シリーズ勧告が成立しました.ただし,世界が欧州,北米,日本と三極化するなかで,この時期の標準化は欧州の活動が主体であり,残念ながら北米,日本からの寄与は時期が遅れました.結局,テレビジョン標準の違い,ディジタルハイアラーキの違いもあって,ディジタル1次群速度用の映像符号化勧告は,625本テレビジョン圏用と525本テレビジョン圏用の複数標準の道を歩むこととなったのです[2-42][2-43].