8.2.1 H.320システムの呼制御
ISDNは回線交換網であるため,その呼制御プロトコルはアナログ電話網の呼制御と親和性があります.ISDNでは,呼制御のメッセージは16 kbit/sあるいは64 kbit/s速度のDチャネルと呼ばれる信号(シグナリング,signalling)チャネルで送られ,パケット交換されます.因みにアナログ電話網ではネットワーク内では共通線信号方式(Common Channel Signalling System No.7, SS7)が用いられ,電話を運ぶチャネルとは別にパケット交換網を構成しています.余談になりますが,鉄道では列車が走る系とは別に運行制御のための信号系が重要な役割を果たしています.その点で鉄道と電話のシステムは類似しています.そもそも,信号と聞けば,まずは交通信号が思い浮かびます.
ISDN信号チャネルのプロトコル構成は,物理層がITU-T I.430[8-39](ベイシックアクセスの場合)あるいはI.431[8-40](ディジタル1次群アクセスの場合),データリンク層がQ.921[8-41]で,その上にQ.931[8-42]が載ります.
呼接続,呼切断の基本シーケンスを図8-16に示します[8-43][8-44].ここには利用者が発呼して相手とつながり,呼切断するまでの信号メッセージの流れが描かれています.信号メッセージ名はQ.931に定義されていて,その全体を図8-17に示します.一例としてSETUPメッセージについて,構成する情報要素,さらにそのオクテット構成を図8-18に示します.
発呼してメディア情報の通信路を設定する,通話する,呼切断して通信を終了する,という一連の動作が正常に行われた場合について,信号メッセージの流れを示します.これらの信号は全て,ディジタルデータの形でやりとりされます.