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コラム7-2 デジタル放送における番組多重の仕組み

 テレビジョンのデジタル放送では,メディア情報の配信にMPEG-2 TS (Transport Stream)を用いています.アナログ時代の6 MHz帯域の中で複数のテレビ番組を配信することができ,TSは音声,映像,データのマルチメディア多重に加えて,番組レベルでも多重されています.受信機は多様なTSパケットを受信し,その中から必要なものだけを抜き出さなければなりません.このための情報がプログラム・スペシフィック・インフォメーションPSI (Program Specific Information)です.PSI自身もMPEG-2 TSパケットとして送られます.音声,映像などメディア情報がPES形式を取るのに対し,PSIの内容は,セクションと呼ばれる形式で送られます.セクション形式ではデータの誤りを検出するためCRC(Cyclic Redundancy Check, 巡回冗長検査)符号が付加されます.
 特定番組を抽出するためのPSIは,次の2種類のパケットから構成されます.

  • プログラム・アソシエーション・テーブルPAT (Program Association Table):PID値が0に固定のTSパケットで送られます.番組識別番号とその番組のPMTを送るTSパケットのPIDとを関係づけます.
  • プログラム・マップ・テーブルPMT (Program Map Table):番組を構成するメディア情報のPID値を指定するテーブルです.

 MPEG-2 TSから,どのようにして望みの番組の音声,映像,その他メディア情報を取り出すかを,図C7-1に示します[7-1].受信機ではまずPID=0x00のTSパケットを受信し,取り出したい番組の番組番号Xに対応するPMTが入っているTSパケットのPID値PXを獲得します.次にPID=PXのTSパケットに入っているPMTを見ることにより,番組Xのメディア情報(ストリームタイプ)とそのストリームのPID値の対照表を獲得します.図C7-1の例では映像PID=PV,音声PID=PA,タイムベース情報PCRを含むクロックPID=PCであることがわかります.後はそれぞれのPID値のTSパケットを復号器に渡して番組を再現します.このように段階的にメディア情報のPID値を指定することにより,番組へのアクセス時間を短くすることができます.

図C7-1 MPEG-2システムの番組多重方法
図C7-1 MPEG-2システムの番組多重方法

PID=0のTSパケットは特別で,そのペイロードであるプログラム・アソシエーション・セクションには,プログラム番号とその番組のプログラム・マップ・テーブルを送るTSパケットPID値の一覧表が書かれています.そこからプログラムXのプログラム・マップ・テーブルを搭載するTSパケットのPIDはPXであることを知ります.PID=PXのTSパケットのペイロードであるプログラム・マップ・セクションにはプログラムXを構成するメディア信号とそのPID値(クロックはPC,音声はPA,映像はPV)の一覧表が書かれていますので,必要なメディア信号を取り出して復号でき,プログラムXが再現されます.