7.3.2 IP網におけるメディア情報の伝送
現在,パケット交換網と言えば,IP (Internet Protocol)[7-7]パケット交換網を意味します.歴史的には,X.25パケット交換網[7-8][7-9],IPX (Internetwork Packet Exchange)[7-10]網などがありましたが,現在はIPパケット交換網に淘汰されています.ユーザのデータは,それがどのようなメディアのものであれ,すべてIPパケットとして目的の場所に送られます.IPパケットは,ネットワーク層のプロトコルを担い,ルータによるパケット交換を可能にします.そのヘッダには送信元のIPアドレス,宛先のIPアドレスのほかパケット優先度などの情報が載せられます.
IPネットワークの特徴は,我々がインターネット利用で体感するように,一つのIPアドレスを通じ多数のアプリケーションが同時に動作できることです.これを可能にするのがトランスポート層のパケットで,アプリケーションが用いるポート番号を示すことにより複数のアプリケーションを識別可能にします.
トランスポート層のパケットには,TCP(Transmission Control Protocol,伝送制御プロトコル)[7-11]とUDP(User Datagram Protocol,ユーザ・データグラム・プロトコル)[7-12]の二つがあります.TCPは,再送制御により誤りのないデータ転送を行うのに対し,UDPは,再送制御の機能はなく,低遅延でデータ転送することが最大の目的です.
IP網におけるメディア情報の転送は図7-9に示すように行われます[7-13].
アプリケーションとの間で授受されるメディア符号化データはまずRTP (Real-time Transport Protocol)[7-14]パケット化され(詳細は次項で説明します),それが誤り制御はない代わりに低遅延でリアルタイム通信に適したUDPパケットのペイロードとなり,さらにIPパケットとしてネットワークに送り出されます.一つのRTPパケットには一つのメディア情報しか入れないのが原則ですので,マルチメディア多重化はRTPパケットのレベルで行われています.