VTVジャパン テレビ会議教科書

テレビ会議教科書 VTVジャパン株式会社

7.2.1 仕組みと特性

 ビット多重は,電話音声の多重化伝送に起源を有する方式です.電話音声の中継伝送には大束の回線が用いられますが,そこでは電話音声の標本化周期である125マイクロ秒(1/8000秒)を単位にその中に多重する音声の数だけのタイムスロットが用意され,各チャネルの音声を1ビットずつ多重します.どのビットがどの電話チャネルに属するかは,125マイクロ秒周期フレーム同期位置からのビット番号で決まります.これと同様にビット多重によるマルチメディア多重では,フレーム同期位置からのビット番号でそのビットがどのメディアに属するかが決まります.フレーム同期は規則的な位置に規則的なビットバターンで挿入されていますので,受信側ではまずこのビットパターンを探し出すことでフレーム同期位置を確定します.多重化の約束は,あらかじめ決められていて,受信側の分離のためにフレーム同期符号以外特別の制御信号は送られません.そのため伝送効率の高いことが特徴です.
 音声と映像をビット多重によりマルチメディア多重する仕組みを,図7-2に示します.ここでは,Fで示した同期符号位置から最初の1ビットは音声情報,続く5ビットは映像情報となっています.ビット多重では,非常に小さな単位で多重化が行われるため,マルチメディア多重に伴う遅延を小さく抑えることができます.このことはメディア情報間の遅延差すなわちメディア情報間の同期ずれも小さいことを意味し,ビット多重方式ではマルチメディア同期のために特別の仕組みは用意されていません.いわば暗黙同期方式[7-2]です.ビット多重方式は,ビット単位の処理を必要とするため,ソフトウェア処理には負担が大きくなります.

図7-2 ビット多重によるマルチメディア多重化・同期
図7-2 ビット多重によるマルチメディア多重化・同期

音声情報と映像情報をビット多重する様子を示しています.ここでは音声ビットレート1に対し映像ビットレート5を仮定していて,同期符号の後,音声1ビット,映像5ビットを多重しています.この多重のための同期ずれ(ここでは音声1ビット時間相当,64 kbit/s音声符号化であれば16μs)は無視できますので,マルチメディア同期のための仕組みは用意されていません.

 ビット多重におけるフレーム同期の動作原理を図7-3に示します.ここでは情報の32ビット毎に1ビットの同期ビットを挿入し,128ビットで1フレームを構成しています.フレーム同期ビットのパターンは'0111'で,同期ビット'0'からのビット番号を識別することで,128ビットの個々を識別することができます.受信側では,フレーム構造は既知ですので,図7-3のフレーム同期探索位置で示した4ビットを位置をずらしながらフレーム同期パターン'0111'と一致するか否かを探してゆき,一致すればそこがフレーム同期の位置と見なして,多重化されたメディア情報を分離してゆきます.

図7-3 フレーム同期の検出
図7-3 フレーム同期の検出

フレーム同期探索を示しています.この例では32ビット毎に同期符号ビットが入り,4ビットパターン'0111'が用いられています.受信側ではこのパターンが検出されるビット位置を順繰りに探して一致する位置をフレーム同期位置と見なします.実際には1回の一致ではなく例えば3回連続して一致すれば同期が取れたと判定し,2回連続して不一致になれば同期外れが起きたとして再度探索を始める,などの保護策が取られます