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コラム6-5 ムーアの法則

 集積回路上のトランジスタ数は,時間の経過とともに指数関数的に増加する,というムーアの法則(インテル設立者の一人Gordon Moore氏が1965年に提唱)が知られています.当初(1960年代)は18ヶ月で倍になると言われていましたが,最近のCPU (Central Processing Unit)については,図C6-6に示しますように,これまで2年で倍の実績であり,2025年頃までは3年で倍になると予測されています[6-63].いずれにしても,ここ当分はムーアの法則が生き続けるようです.

図C6-6 一般的性能CPUのチップあたりトランジスタ数の成長
図C6-6 一般的性能CPUのチップあたりトランジスタ数の成長

2011年までは集積度が2年で2倍になる実績で,それ以降は3年で2倍になる予想です.ムーアの法則が提唱された当時は1965年の12ヶ月で集積度は2倍になり,短期的にはこの率で集積度は上がると予測されました.時代とともにこの成長速度は鈍ってきています.

 IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) Spectrum誌にムーアの法則50年と題した記事[6-64]が掲載され,次のように50年を時代分けしています.

  • 1970年代はMoore's Law 1.0の時代で,ひたすら沢山の素子を集積化した.
  • 1990年代はMoore's Law 2.0の時代で,微細化によりトランジスタを小さくしてコストを下げた.
  • 2015年以降はMoore's Law 3.0あるいはmore than Mooreの時代で,微細化にコストがかかり,成長が止まる.ディジタル・デバイスをアナログ・デバイスと融合させる,従来シリコンになじまなかった部品をシリコン化して集積するなどの方策が取られる.

 ムーアの法則は指数関数的成長を意味するので,これまでは小企業が直線的成長として地道にこつこつの改良をするより,ただ2年ほど待っていれば新世代のプロセッサを使って強力な機能が実現できるので競争にならなかった,しかし今後ムーアの法則が鈍化するとすれば事態が変わり,open source hardware(注)によるビジネスが価値を生み出す,とも分析しています.
注)汎用的な誰にでも手に入るハードウェアという意味です.昔は,汎用的なデバイスを組み合わせ目的の機能を果たすボードを作ることで,製品開発が行われていました.現在では,LSIを設計する,あるいは汎用的なプロセッサーで動作するプログラムを設計することが製品開発の主流です.ムーアの法則が成り立たなくなれば,昔の製品開発手法が復活する,との見方です.