7.1 マルチメディア多重化・分離の役割
テレビ会議システム全体におけるマルチメディア多重・分離の位置づけは,第3.2節の図3-2で説明しました.表現メディアとしての音声,映像はもとはアナログ情報ですが,符号化によりそれぞれのディジタルストリームを構成します.システムが必要とする品質とビットレートに合わせ帯域圧縮符号化が適用されます.「データ」は,それ以外の表現メディア情報で,テレビ会議におけるホワイトボード画面情報や静止画,パソコンデータなどです.これらメディア情報に加え端末間の制御情報が多重化されてネットワークに送られます.
テレビ会議のようなマルチメディア通信では,各種の表現メディア情報は,同時並行して発生します.これらを通信チャネルで運ぶため,多重化して一つのストリームとすること,すなわち並列から直列へ変換するのがマルチメディア多重の役目です.その際,音声と映像さらにはデータを時間的に同期させ,それらが同時並行して発生した通りに受信側で再現できるようにすることが,マルチメディア同期の役目です.
マルチメディア多重・分離の仕組みは,第3.2.5項の図3-9で説明しましたが,要点を図7-1に再掲します.並列メディア情報を直列なビットストリームもしくはパケットストリームに変換するのがマルチメディア多重,逆の処理がマルチメディア分離です.分離されたメディア情報はそれぞれの復号器に渡され,音声,映像,データとして再生されます.
マルチメディア多重化の方法は,大きくビット多重とパケット多重に分けられます[7-1].ビット多重は,文字通りメディア情報をビット単位で交互に切り替えて送り出す方法で,電話ネットワークに由来する技術です.一方,パケット多重はコンピュータ由来の技術で,メディア情報を適当な長さだけ集めたパケットにして,それを交互に切り替えて送り出します.