VTVジャパン テレビ会議教科書

テレビ会議教科書 VTVジャパン株式会社

2.3.11 IP網利用への流れ

 テレビ会議システムにとって端末間を結ぶディジタル・ネットワークは基本的な構成要素です.1990年代にはISDNに始まり,多様なネットワークの利用が試みられましたが,1990年代後半より,e-mailやブラウザによるマルチメディア情報提供の成功に支えられインターネットが急速に社会インフラとして受け入れられて行きました.それに伴い,世界的な接続性と広帯域化が進んでゆき,IPネットワークはビジネス通信を支えるインフラとしても確立します.
 通信の世界では,電話は巨大なビジネスで,電話信号は専用の回線交換網で運ばれてきました.リアルタイムに最小限の遅延で転送することが求められるからです.一方インターネットは,IPパケットを蓄積して転送する仕組みのパケット交換網ですから,リアルタイム性は要求されません.従って,電話網とインターネットは相互に独立した存在でした.
 しかし,IPパケット交換網であるインターネットは,電話信号をIPパケットに載せることで,電話トラフィックも運ぶことができます.パケット交換網に固有な遅延の問題は,ネットワークの高速化とともに解消されて行きます.これがVoIP(Voice over IP)の始まりで,特性の向上につれ,電話信号をIPネットワークで送ることが経済的な電話網の構築手段と見なされるようになります.電話のサービスもインターネットのサービスも同一のネットワークで提供することで,ネットワークの経済化を図れる効果があります.代表的な電話会社のNTTは,2010年11月「2020年頃より,PSTNからIP網へのマイグレーションを開始し,2025年頃に完了を想定」と発表しました[2-58].
 このような展開から2000年代初めより,テレビ会議システムを支えるネットワークはインターネットを含むIPネットワークが主流になりました.
 IPネットワークの上で動作するテレビ会議システムには,ITU-Tで規定するH.323[2-57]とともに,IETFで規定する呼接続プロトコルSIP (Session Initiation Protocol)[2-59]に基づくシステムがあり,多くのテレビ会議端末では両者が実装されています.