3.2.5 マルチメディア多重・分離
テレビ会議のようなマルチメディア通信では,音声,映像,データ,制御の複数メディアが同時並列的に送出情報を生成します.一方ネットワークを構成する回線上では全ての情報がビット列あるいはパケット列として直列的に流れます.受信側では逆に回線を通して直列的に届いたマルチメディア情報を元の並列情報に戻します.この並列情報と直列情報間の相互変換が多重・分離機能です.マルチメディア多重・分離の動作を図3-9に示します.並列情報を直列情報に変換することを多重あるいは多重化(英語ではmultiplexing)と呼び,直列情報を並列情報に戻すことを分離(英語ではdemultiplexing)と呼びます.また,ビット単位で多重化することをビット多重と呼び,一定数のビットから成るパケットを単位に多重化することをパケット多重と呼びます.
図3-9 マルチメディア多重・分離
送信側で同時に生成された音声,映像,データ,制御のメディア情報は,多重化機能により直列的に並び替えられネットワークに送られます.受信側では,分離機能により直列信号が元の並列信号に戻されます.
マルチメディア多重・分離に内在する機能にマルチメディア同期があります.並列信号を直列信号に変換するには,何らかの待ち合わせが必要です.待ち合わせ時間が長くなれば,リップシンクのようなメディア間の同期が失われることになります.一般にビット多重ではこの待ち合わせ時間は無視できるほどに小さく,特別な同期機能は用意されていませんが,パケット多重では待ち合わせ時間が大きくなり,マルチメディア同期のため複数の情報の各々が生成された時刻を示すタイムスタンプ(timestamp)が用いられます.タイムスタンプは郵便の発送日時を示す印に由来する用語です.