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 勧告ITU-T H.320[9-7]は,最初のオーディオビジュアル通信システム標準です.初版は1990年12月に承認され,後続のH.300シリーズのモデルとなりました.この勧告の標題は"Narrow-band visual telephone systems and terminal equipment"となっており,"Narrow-band"はN-ISDN (Narrow-band ISDN)を意識した用語で,"visual telephone"の方はH.100[9-14]に定義されているように,いわゆるテレビ電話だけでなくテレビ会議も含めた広義の概念で,本教科書でいうオーディオビジュアル通信と同義です.
 H.320システムのプロトコルスタックを図9-5に示します.

 

図9-5 H.320システムのプロトコルスタック

H.320端末の構成要素をプロトコルに着目して表しています.必須の標準(青字で表示)とオプションの標準(黒字で表示)の別が重要で,必須要素が全てのH.320端末間の相互接続を確保します.

 

 青字で記した標準は必須,黒字の標準はオプションです.最低限の要素を必須とし,どの端末ともそのモードでは相互接続を保証しています.またオプションの要素は,H.242[9-24](第8.1.1項参照)で規定する通信制御により,双方の端末がそのオプションを搭載していれば起動できます.このように相互接続性と新たな技術要素による性能あるいは機能の拡張性を両立しています.新たな技術要素の典型例は,音声と映像の符号化です.1990年以降,多くの符号化標準ができ,H.320ほかのシステム標準はそれらをオプションとして採り入れてきました.
 H.320システムの全体像を語るうえで欠かせない下記の項目については,先行する章で記述しましたので,そちらを参照して下さい.

 最後に,回線交換ネットワーク利用に特有の技術として,逆多重化あるいはバルク伝送などと呼ばれるchannel aggregationを図9-6に示します.これはISDNの64 kbit/sチャネルをn本束ねて,nx64 kbit/sの高速チャネルを提供する技術です.通信の始めに遅延補償のためのフレーム信号を64 kbit/sの各チャネルに送り,受信側ではチャネル間の遅延の違いを補正します.一旦遅延補償ができれば,フレーム信号は取り除き,利用者のデータが送られます.ISDNはすべてのチャネルが10-11精度の共通クロックで運用されていて,一旦遅延補正ができれば実用上チャネル間で時間ずれが生じることはありません.この方式はISO/IEC 13871[9-25]として標準化され,TTCでは日本語表記の標準をJS-13871[9-26]として発行しています.この技術はBondingとも呼ばれています.

 

図9-6 逆多重化(バルク伝送)- Channel aggregation

ISDNの64 kbit/sチャネルを複数束ね,1本の高速チャネルのように見せる技術です.ISO/IEC標準のBoding方式が一般に使われています.H.221にも複数の64 kbit/sチャネルを利用する仕組みが用意されていますが,主に2B(2x64 kbit/s)通信に適用されています.

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