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1) 基本的アプローチ

 人間の視力は,見分けられるランドルト環(図C5-1 a))の切れ目に対応する視角X度で定義されます.ちなみに視力1.0は視角1分(1度の1/60)を見分けられる能力です.テレビ的には,視角X度の円が1画素を構成するとみなすことができます.
 人間の視野が視角Y度の円形とすると(実際には楕円形ですが簡単のため円形とみなします),この中に視角X度の画素が何個入っているかを計算すします.図C5-1 b)を参照し,視角が距離Rの投影面に描く円の直径は視角に比例することから,次のように計算できます.

  一般に,視角α度の視野が描く円の直径 = 2πR(α°/360°)
  視角Y度の視野が投影面に作る円の面積 = π{R(Y/360)}2
  視角X度の視力が投影面に作る円の面積 = π{R(X/360)}2
  視野の中に含まれる画素数 = (Y/X)2

 一方,nKテレビ画面に含まれる画素数Nは縦横比が16:9とすると,次のように計算されます.

  N = (1000n){(9/16)(1000n)} = (9/16) (1000n)2

 従って視野角Y度を視力X度で見ていれば,そこに含まれる画素数をnKテレビ相当に換算すると

  (Y/X)2 = (9/16) (1000n)2
  n = (Y/X)/750

となります.例えば,視野角10度を視力1(視角1/60度相当)で見ているとすると,その情景は画素数の点では0.8Kテレビ相当ということになります.

 

図C5-1 視力と視野

a)は視力測定に使われるランドルト環です.視角1分となる切れ目を識別できれば視力1.0です.b)は視力に対応する視角が1画素を構成し,視野角内に何個の画素が含まれるかを計算するためのものです.

 

2) 実際の視力特性

 人間の眼の視力と視野の特性を図C5-2に示します[5-49].
 一点を注視したときの視力は,中心で1.0だとしても,中心から離れると急激に低下します.注視点のあたりはよく見えたとしてもそのまわりはぼんやりと見える状態です.その時の視野は上下と左右で異なる楕円形ですが,簡単のために円としますと,「視力などの視機能が優れている中心視領域」弁別視野は視野角5度,視野内の平均視力は0.7(視野角で1分/0.7 = 1/42度)で,等価なテレビ解像度では0.28Kとなります.
 頭は静止していたとしても,「眼球運動で瞬時に情報受容できる」有効視野は25度で,このときは視力1.0で見ているので,等価なテレビ解像度は2Kとなります.テレビ画面やPCの画面を見ているのはこの状態です.

 

図C5-2 視野内での情報受容特性

人間の眼が見ている視野内の解像度分布を示しています.一点を注視している場合に解像度高く見える範囲は弁別視野と呼ばれ視野角で5度以内です.その外側に眼球運動だけで良く見える有効視野が水平30度,垂直20度の範囲に広がります.更に頭を動かして得られる視野が安定注視野で,その外側によくは見えないが没入感に寄与する誘導視野があります.

 

3) 頭を動かして視野を広げると

 人間は,見たいものがあれば,身体や頭を動かして極端には360度の視野を得ることができます.「眼球・頭部運動で無理なく注視でき,効果的な情報受容ができる」安定注視野に限定すると,視野角は70度程度となります.このときも,視力1.0で注視することになるので,等価なテレビ解像度は5.6Kと求められます.

4) 何故8Kテレビが開発されているか

 図C5-2には「情報識別能力は低いが主観的な空間座標系に影響を及ぼす」誘導視野の存在が記されています.これが没入感をもたらす視野で,視野角では90度,およそ8K相当となります.おそらくこれ以上の解像度のテレビは人間の視力を越えることになり,開発の必要はない,と言えそうです.

5) まとめ

 人間の見ている情景は,視力特性を簡単化したモデルによりテレビ解像度で表現すると,次のようになります.

  一点を注視する場合 0.28Kテレビ相当
  眼球運動を伴って見る場合 2Kテレビ相当
  さらに頭部運動を伴う場合 5.6Kテレビ相当

 

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