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 第2.3.4項で述べた1972年の自民党本部と首相官邸を結ぶテレビ電話サービス開始に,筆者も機器設置と試験に関わる機会がありました.自民党本部では,幹事長,総務会長,政調会長の部屋に,首相官邸では官房長官の部屋にテレビ電話機が設置され,小規模の交換機で端末間を接続するシステムでした.テレビ電話機からの入出力映像信号はアナログで,テレビ電話機と交換機の間は平衡ケーブルによるベースバンド伝送が用いられました.
 政治向きのお客様であったことから,ごく短時間にシステム構築が必要で,大慌てで機器設置,配線,試験を行ったことが印象に残っています.大慌ての中でも,幹事長の椅子にちょっと座ってみる機会は逃さなかったことも印象に残ります.
 その中で遭遇したのが,チップ・リング問題です.チップ(tip)というのは電位が+側の線,リング(ring)は-側の線で,映像信号は電話信号と異なり極性が正しくなければ白黒反転の映像が表示されることになります.
 複数端末を交換機で接続する際,この白黒反転を避けるには,一つ基準となる端末を定め,それと各端末を接続したとき映像が白黒正しく表示されるように配線の極性を定めれば,任意の端末間接続で正しい極性が得られることになります.

 

図C2-1 アナログテレビ電話システムのチップ・リング問題

アナログテレビ電話システムでは,端末機と交換機の間は,平衡対ケーブルで結ばれていました.映像信号には極性があり,チップとリングの端子に平衡対ケーブルのいずれの線を接続するかで,映像は白黒反転します.基準端末と接続して正しく映像の出るように各端末を接続するのが対策ですが,もう一つ重要なことは基準端末の送信映像を交換機で折り返したとき白黒正しく表示されるように極性を選ぶことです.

 

 ところが,最初は,図C2-1のa)に示す状態になっていました.ここでは端末機をA, B, Cの3台とし,Aを基準として説明しますが,端末機がD, E, F, ...と増えても問題の出方は変わりません.端末Bを設置する際は,基準端末Aと接続したとき正しい極性となるように配線する,もし白黒反転するようであれば,配線をねじって接続することとします.端末Cを設置するときにも同様に,基準端末Aと接続して正しい極性となるよう配線します.そうすると端末Bと端末Cを交換接続したときには,図C2-1のa)からわかるように,白黒反転映像が表示される結果になります.基準端末Aの受像側の配線がねじれていたことが原因です.すなわち,基準端末Aの映像を交換機で折り返したとき,正しい極性になっていなかったため,このような事態になっていたのです.
 正しい端末Aの配線を図C2-1 b)に示します.この状態であれば,任意の端末間接続で正しい極性が得られます.
 アナログテレビ電話システムでは端末機と交換機の間のケーブルは平衡形であるが故に生じた問題ですが,電話やISDNでも同様に平衡形ケーブルを使用していますので,極性の問題は生じ得ますが,いずれの極性で端末機に接続されても良いようにそれぞれの電子回路が作られています.

 

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