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 テレビ電話とは,遠く離れていても相手の姿を見ながら対話のできる通信サービスです.そのイメージを図2-1に示します.その名が示すように,電話にテレビ映像が融合した通信メディアで,音声と映像がリアルタイムかつ双方向に送受信されます.英語では,videophone,video telephone,visual telephoneなどと呼ばれます.
 

図2-1 テレビ電話とは

テレビ電話のサービス・コンセプトを現在の製品で示します.電話が基本で,それに映像がつき,相手の姿を見ながら対話ができるようになっています.


 テレビ電話のアイデアは何時,誰が生み出したのでしょうか.筆者は正確な情報にたどり着いていませんが,電話の登場後,あまり間を置くことなく思いつかれたのであろうと想像します.
 グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)による電話の発明が1876年,米国での電話サービス開始が1878年でした.日本の電話サービスは東京・横浜で1890年に始まりました.ジャーナリストで小説家の村井弦斎(1864〜1927)が1901年1月2日と3日の報知新聞に「二十世紀の予言」と題し,未来はこうなるを記事にしました(図2-2)[2-1][2-2].その中で電話の未来について

  • 東京にいて,ロンドン,ニューヨークの友人と自由に話しができる

  • 相手が画像に現れる「写真電話」ができる

  • 遠距離の品物を選んで購入する「買物便法」も登場する

と記述しているとのことです.
 

図2-2 20世紀初頭の未来予測に登場するテレビ電話

1890年に日本で電話サービスが始まって11年後の未来予測に「写真電話」という言葉が登場し,さらにその19年後には「對面電話」(読み:たいめんでんわ)のイラストが登場します.


 ちなみに東京・大阪間の長距離電話開始が1899年であった時代背景を考えると,村井弦斎には先がよく見えていたことに驚きます.また米国AT&T (The American Telephone & Telegraph Company)社のテレビ電話商品名はPicturephoneで,文字通り写真電話です[2-3].
 図2-2の挿絵は,その19年後の1920年に描かれた「對面電話」(読み:たいめんでんわ)です.写真機のようなデバイスが撮像用なのか,表示用なのか,あるいは両方なのか判然としませんが,挿絵の説明に「芝居も寄席も居ながらにして観たり聴いたりできる」とありますので,テレビ電話のオーディオビジュアル情報提供利用に着目しているようです.
 

図2-3 電話の未来予測

1929年に描かれた電話の未来です.第1コマはテレビ電話そのもので,1955年には世に出ていると予測されています.第2コマは,電気通信になじまないと思われますが,第3コマは移動形ロボットによるテレプレゼンス(本書第2.3.13項参照)で実現されるかもしれませんし,第4コマもリアルタイム通信とは離れますが電子仏壇の形で似たようなことができるようになるかもしれません.


 図2-3[2-4]は1929年の未来予測図です.『逓信協会雑誌』の讀者漫畫として掲載されました.投稿者は「長野逓講・和田嘉助」となっていますので,長野逓信講習所の職員か研修生による作品と推察されます.注目すべきは一コマ目のテレビ電話です.当時から26年後の1955年に登場すると描かれています.電話機こそその頃のデルビル磁石式壁掛電話機を元にしているようでレトロな雰囲気ですが,サービスコンセンプトの点では,図2-1の左側に示す現在形と違いはありません.
 これらから,テレビ電話は電話が使い始められて間もなく,自然発生的に,相手が画像に現れる電話としてイメージされたことが分かります.
 通常,自然な発想の製品やサービスは支える技術の登場とともに普及するのですが,テレビ電話は例外のようです.この点は第5.5節で考察します.


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