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 ビット多重とパケット多重の両方の特徴を生かしたハイブリッド形のマルチメディア多重技術も実用されています.既存アナログ電話網や移動通信網のような低ビットレート回線のうえでマルチメディア通信を行うためのシステム標準はITU-T H.324[7-33][7-34]ですが,マルチメディア多重・分離はITU-T H.223[7-35]に規定されていて,ハイブリッド形のマルチメディア多重を採用しています.
 図7-22にその原理を示します[7-36].パケット多重方式では,一般にヘッダ,ペイロード,トレイラを含めたパケット全体をそのレイヤのPDU(Protocol Data Unit)と呼び,ペイロードはそのレイヤの通信内容である可変長データSDU(Service Data Unit)を運ぶための情報フィールドです.一つのSDUは1あるいは複数個のPDUに分けて送られます.H.223 MUXレイヤは,MUX-SDUの単位でAL(Adaptation Layer)と情報をやりとりし,可変長パケットMUX-PDUを伝送チャネルを通じ相手側に伝えます.一連のMUX-PDUはHDLC(High-level Data Link Control)フラッグ"01111110"で区切られていて,HDLC零ビット挿入(1が5個連続するとその後に強制的に0を入れる)によりMUX-PDU内でHDLCフラッグが擬似されることを防止します.

 

図7-22 H.223マルチメディア多重

パケット多重でありながらビット多重の低遅延を実現する多重化方法です.音声はパケット内で分割不可,データと映像は分割可と定義され,それぞれのビットレートに応じて多重化テーブルが設定されます.16種類までのテーブル情報は通信の最初にH.245メッセージで送られ送受信機間で共有されますので,各パケットのヘッダでテーブル番号を示すことでマルチメディア多重方法が指定されます.

 

 MUX-PDUのヘッダは,HEC(Header Error Control)3ビット,MC(Multiplex Code)4ビット,PM(Packet Marker)1ビットで構成されます.H.223の特徴の一つは,低ビットレートで特に問題となるパケット化遅延を,一つのMUXパケットの中に複数メディア情報を入れることで解決しています.MUX-SDU内のどのバイトがどの表現メディア(論理チャネル)に対応するかのパターンは多重化テーブルで定義され,MUX-PDU毎に異なった多重化テーブルを用いることができます.MCは,多重化テーブルを番号で示すためのフィールドで,16個のテーブルの一つが指定できます.これら16個のテーブル内容は,通信制御プロトコルH.245により通信の最初に相手側に送られますので,送信側の設計により最適な多重化方法をパケット毎に選択することができます.HECフィールドはMC情報の誤りを検出するための3ビットCRCです.PMは,直前のMUX-PDUにMUX-SDUの終わりが含まれていれば"1"に,そうでなければ"0"に設定されます.基本的にはパケット単位の処理を行いますが,通常のパケット多重では一つのパケット内には同一メディア情報のみが搭載されるのに対し,一つのパケット内でバイト(オクテットともいう)単位のマルチメディア多重を可能にします.
 図7-22の多重化に対する多重化テーブルを図7-23に示します.
 ハイブリッド形マルチメディア多重は,パケット多重の柔軟性,ソフトウェア処理の容易性とパケット化遅延の短縮を実現しています.
 同様のハイブリッド形多重はATM (Asynchronous Transfer Mode)における音声多重伝送のためのAAL2 (ATM Adaptation Layer 2)[7-37]でも用いられています.通常はATMのパケット(セルと呼ばれる)内には同一チャネルの情報が搭載されますが,AAL2では複数の音声チャネル情報を多重化して一つのセルを構成することでパケット化遅延の低減と伝送効率の向上を両立しています.

 

図7-23 H.223マルチメディア多重テーブル例

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